友や家族、社会のために汗を流す
人間性あふれるリーダーシップ教育
私は、今まで40年間幼児教育に携わり、教育の現場で働いて参りましたが、幼少期ほど人の一生を左右する大切な成長の時期はないとつくづく思うのです。特に、人は概ね3~4歳から、9~10歳までに脳の基本が完成すると言われています。詳しく述べると、人間の脳は、概ね9~10歳までに、知性(言語的知能、論理数学的知能)、芸術的能力(音楽的知能、絵画的知能)、運動神経(身体的運動知能、空間的知能)、さらには人間関係能力(社会的知能、感情的知能)の基礎が育まれ、人間はこの頃に動物としての臨界期を迎えると言われています。
私は、幼児教育の理論と長年の経験から、「環境」がその人の能力を大きく左右すると実感していました。以下は、アートのみに限った情操教育のケースです。
リリー幼稚園や保育園では、以前から昼食の折にクラシック音楽を流していますが、それがきっかけで、後にオーケストラの奏者になった卒園児がいます。また、身体表現活動を保育カリキュラムに取り入れてきましたが、十代で英国の国立オペラハウスのバレー研修生として選ばれた卒園児、劇団四季のスターになった者、宝塚歌劇団に入った卒園児も現れました。無論、卒園児のたゆまぬ努力の賜ですが、情操を育み、能力と感性を高めるカリキュラムの実践を続けてきた私にとって、大きな励みになる顕著な事例となりました。そして改めて臨界期へと繋げる「幼小連携教育」の必要性への確信ともなりました。
リリーベール小学校は「幼小連携教育」を実現するため、2004年に設立されました。教育理念に「自立の心・創造性・指導力を培う」を掲げ、人間性あふれる真のリーダー教育を目指しています。
本校の「幼小連携教育」の特徴の一つに、幼稚園、保育園教育と小学校教育のギャップが生まれないように、低学年の教諭は幼稚園教諭の担任経験もしくは研修をしていることがあげられます。言葉で表現できない低学年の児童の表情や、小さな変化、サインを見逃しません。子どもたちは小学校という新たな社会で、信頼できる大人(教諭)に心を開き、安心して生活を送ることで、はじめて持てる能力を伸ばすことができるのです。
自然に恵まれた英国風の美しい環境の中で、子どもたちの能力を可能な限り発揮させ、ノーベル賞から、一流のアーティスト、アスリートが育つことを合言葉に、様々な能力を開花できる独自のプログラムを展開しています。
例えば総合芸術である演劇の授業。社会性や指導力トレーニングのための1年生から6年生までを縦割りにしたハウス活動。音楽の合唱への取り組み。言語的知能を伸ばすために、国公立学校より時間数の多い国語の授業と、週4時間(1年生・2年生)の英語の授業。すべての教室に電子黒板を常備。プレゼンテーションをコンピュータで行う「情報」の授業。全学年キャンプを中心とした自然体験野外活動。などなどです。
これら独自のプログラムは、目先の中学受験を目指すためだけのものではありません。本校の校歌に、「人を愛する慈愛の心 友のために汗を流そう」という節があります。慈愛の心を持ち、友や家族、社会のために汗を流す。人間性あふれる真のリーダー育成こそが心願なのです。
幼少期に根っこの部分をしっかりと育めば、その後はどこへ行っても安心です。自分でたくましく学習し、自ら人生を切り開いていってくれることでしょう。
リリーベール小学校 校長
学校法人リリー文化学園 理事長・学園長
大久保 博之
元茨城県教育委員会委員長、元茨城県商工会議所連合会会長、元水戸商工会議所会頭。
1953年、茨城県生まれ。
大学卒業後、就職内定を得るものの、教育の仕事をしたいとの思いから母が運営する幼稚園の仕事に携わる。子どもの能力には「臨界期」があることに注目し、「脳の発達過程に逆らわない教育」を実践。脳の臨界期をもとに「幼小一貫教育こそ重要」だと考え、2004年、全国初の「幼小一貫校」を設立し同校校長に就任。現在では、幼稚園・小学校などあわせて14施設を展開しグループ全体の生徒数は約5000名、これまで育ててきた生徒総数は5万人以上に及ぶ。また、茨城県商工会議所連合会会長をはじめ46の公職に就くなど、教育分野にとどまらず、経済、金融、環境、国際交流など幅広い分野においてリーダーシップを発揮。
専門は幼児教育学、労働心理学。
著書
子どもの能力は9歳までに決まる - サンマーク出版
(韓国、中国、ベトナムでも出版)